少しずつ季節も移り変わり、徐々に秋・冬の気配を感じられる時期になりましたね。
この時期に必ずと言っていいほど話題に上がるインフルエンザなどの感染症。
全国の感染報告数が徐々に上がってきており、予防接種を検討されている方もいらっしゃるかと思います。
実は2024年度から日本で「インフルエンザの点鼻ワクチン」が使用可能となったことはご存知でしょうか。
「フルミスト」というインフルエンザの点鼻ワクチンが、注射を伴わない新しいワクチンとして最近注目を集めています。
今回のコラムでは「フルミスト」の特徴や注意点について詳しく解説します。
注射が苦手なお子さんの接種で悩んでいる親御さんにとって、朗報かもしれませんので是非ご参考ください!
フルミストとは?
フルミストは注射ではなく鼻から吸入するタイプのインフルエンザワクチンであり、2024年8月にワクチンとして製造販売の承認を取得しました。
適応年齢は「2歳から19歳未満」とされ、両方の鼻の穴に1回ずつ噴射するだけで済むので痛みがなく、注射が苦手な方にも優しい設計です。
接種後2週間程度でワクチンの効果が得られるとされ、12歳未満の場合従来のワクチン接種回数は2回となっていましたが、臨床研究の結果から1回の接種で十分に免疫が付くことが分かっています。
フルミストはウイルスを中和するIgG抗体だけでなく、鼻やのどの粘膜部位から分泌されるIgA抗体も生成を誘導することが立証されています。
インフルエンザウイルスの感染経路は主に気道粘膜とされているため、鼻に直接免疫をつけるフルミストは特に小児において注射でのワクチン接種より予防効果が高いとされています!
IgA抗体が分泌されることで、鼻にウイルスが侵入した時点で粘膜と抗体が結合し、体内にウイルスが蔓延することを未然に防ぐことができます。
そのため、重症化を予防するだけでなく感染予防にも効果が高いことも大きな特徴です。
フルミストのメリット・デメリット
メリットが多いように思えるフルミストですが、注意すべき点やデメリットもあるため、接種を検討する際にはしっかりとメリット・デメリットを把握しておきましょう。
メリット
- 薬液を鼻の中に噴霧するだけなので、痛みがない
- 感染経路に直接作用してウイルス侵入を防ぐため、予防効果が非常に高い
- 流行しているインフルエンザの株が違っても発症を軽症化させる効果がある
- ワクチンの効果継続期間が1年程度ある(注射製剤はおよそ5カ月程度)
- 特に小児において予防効果が高い
- 12歳以下の小児でも1回の接種で良い(注射製剤は2回接種推奨)
- 接種後にくしゃみなどをしても効果発揮に十分な量が投与されることが立証されている
デメリット
- 接種年齢に制限がある(2歳~19歳未満)
- 接種後3~4割程度の確率で、鼻汁・鼻閉・咽頭痛など気道・粘膜に関連した副反応がでることがある
- 1年以内に喘息症状・発作があった場合は接種ができない
- 妊婦、または妊娠の可能性がある方は接種ができない
- 他のワクチンと同様、まれに発疹や蕁麻疹・アナフィラキシーショックなどの反応を起こす可能性がある
なぜ適応年齢が2歳から19歳未満なのか?
前述のようにフルミストは注射による皮下接種インフルエンザワクチンよりもインフルエンザウイルス感染の予防効果が認められましたが、研究過程で2歳未満のお子さんには有害事象・副反応の作用が強くでたこともあり、適応年齢に入りませんでした。
また、日本ではワクチンの承認審査の視点として「既存ワクチンと置き換わる、あるいは並列する選択肢の場合、既存ワクチンと有効性・安全性は【同等以上】か」ということが審査されます。
フルミストは研究の結果19歳以上の年齢層には既存の注射製剤インフルエンザワクチンと効果の差が認められなかったため、審査視点である「有効性・安全性が同等以上」ではないことから、19歳以降の成人は対象とならなかった経緯があります。
フルミストワクチン接種 Q&A
①フルミストワクチンはどこで受けられますか?
フルミストの点鼻ワクチンを受けるにはお住まい近くの「小児科」もしくは「内科」をご受診ください。
ただしフルミストは2024年8月に承認が取得されたばかりであり、在庫は10月以降に入荷されるため、クリニックによっては取り扱いがないことがあります。
ですので、受診する際には事前にお電話やホームページで取り扱っているかを確認しましょう!
②フルミストワクチンを接種する時期はいつ頃が良いですか?
インフルエンザ感染者の数は11月~12月に増え、1月~2月頃にピークを迎えます。
フルミストは予防接種してから抗体がつくまでおよそ2週間程度かかるとされていますので感染者数が増える少し前「10月~11月頃」に予防接種ができると安心です!
③ワクチン接種の際に予約は必要ですか?
Q&A①でも少し記載したように、新しいワクチン製剤のため在庫が限られていることや入荷されていないこともあるため、「完全予約制」としているクリニックがほとんどです。
受診予定のクリニックのホームページで予約状況を確認してから受診するようにしましょう。
④従来の注射との価格差はありますか?
フルミストは従来の注射製剤ワクチンと同様に保険適用外となるため全額自己負担です。
接種費用についてクリニックによって多少差はありますが7000円~10000円程度としている事が多いようです。
注射製剤ワクチンは3,000〜5,000円程度であるため少し高いような印象もありますが、12歳以下のお子さんの場合、注射製剤は「2回接種」が原則となるため、1回の接種で良い点鼻製剤ワクチンとトータルで比較するとそこまで大きな価格差はありません。
フルミストは自治体によっては「インフルエンザ予防接種補助金」の助成対象となることもあるため、お住まいの自治体のホームページもぜひご確認ください!
まとめ
フルミストは注射が苦手な方々にとって魅力的な選択肢となり得るワクチンです。
効果は従来の注射型ワクチンより優れている点も複数あり、接種時の痛みがないという大きなメリットもあります。
ただし、副反応として鼻症状が出やすいことや、喘息患者への注意が必要なことなど、いくつかの留意点もあります。
接種を検討する際は体質や既往歴を踏まえ、医師とよく相談した上で判断していきましょう。
インフルエンザ予防にはワクチン接種に加えて、手洗い・うがいなどの基本的な感染対策も重要です。
以下コラムでも感染対策について触れておりますので、ぜひご参考ください。
★健康コラム 「インフルエンザ対策」
執筆者プロフィール きくち/看護師
美容・サービス業の会社員として就業をした後に改めて看護資格取得。消化器内科・皮膚科などの臨床経験後に産業看護師として働く皆様の健康をサポートするオンライン相談業務に従事しておりました。一般論ではなく「目の前のあなた」に寄り添ったメッセージをお届けいたしますので、気になること・困ったことがありましたら気軽にご相談ください。
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