「上司の言葉にカッとなってしまった」「パートナーがなぜ怒っているのか理解できない…」
私たちは日々、様々な感情に揺さぶられながら人間関係と向き合っています。
そのような中で感じるストレスの多くは、「相手の気持ちが分からない」または「自分の気持ちを相手に理解してもらえない」といった、心のすれ違いから生じることが多いです。
今回のコラムでは、メンタルヘルス改善の鍵となる【メンタライゼーション】というスキルについて解説します。
これは特別な能力ではなく、繰り返しトレーニングしていくことで誰もが身につけられるとされています 。
このスキルを身に着け、より穏やかで円滑な人間関係を築いていきましょう!

メンタライゼーションとは?
メンタライゼーションとは「自分自身や他者の行動の背景には、心の中の状態(感情、意図、信念など)がある」と理解する能力を指します。
簡単に言うと「あの人は今、何を考えているのだろう?」「私は今、なぜこんなにイライラしているのだろう?」と、立ち止まって心の内側に目を向ける力のことです。
ストレスや不安が高い状態にあるときほど、このメンタライゼーションの機能は低下しやすいといわれていますが、この力が高い人は感情の波に飲まれにくく、人間関係の誤解を減らすことができるとされています。
メンタライゼーションが低いとどうなる?
心の内側に目を向け、理解する力が低下すると、心が以下のような傾向に傾きがちになるとされています。
◆一方的な視点での受け止め
相手の行動を、自分の主観という一方的な視点で受け止めてしまいがちになる。
(例:「彼が無視したのは、私を嫌っているからだ」と即断する)
◆感情の爆発と衝動的な行動
自分の感情が高ぶった際になぜそう感じるのかを理解できず、すぐに怒りや不安として爆発させてしまう。
(例:「とにかくイライラする!」と今の感情のままに行動し、衝動的な言動に出てしまう)
相手の心を理解できず、自身の一方的な視点を決めつけてしまう…といったことが起きかねません。
この後紹介するトレーニングを実践し、自分の内面を穏やかにしながら相手の考えに目を向ける練習をしていきましょう。
今日からできる!メンタライゼーションを鍛える2つの実践法
メンタライゼーションは、意識的なトレーニングによってその機能を回復・強化することができます!
心理療法の際に用いられる技法に基づいて、自分へのメンタライゼーション、他人へのメンタライゼーションという二つの視点からの実践法をご紹介します。
1)「立ち止まり、内省する」3ステップ
(自分へのメンタライゼーション)
つい感情が高ぶった時の思考の偏りを防ぎ、自己理解を深めるための練習です。
- STEP①【一時停止(ストップ)と外側への視点】
感情的な引き金(トリガー)に直面したら、即座に反応するのをやめ「自分の外側」に意識を向けます。
深呼吸をしたり、自分のいる部屋の壁の色や手のひらの感触など、外部の物理的な事実に意識を集中させ、突発的な感情に気持ちが偏らないようにします。
- STEP②【心の観察とラベル付け】
「私は今、何を感じている?」「この感情に名前をつけるなら何か?(例:軽蔑、失望、疲れ)」と自問します。
感情を特定の言葉(ラベル)で表現して、曖昧な「モヤモヤ」や「イライラ」といった感情を客観視します。
- STEP③【原因の問い直し】
「なぜ今、この感情が湧いたのだろう?」「過去のどの経験と似ているだろう?」と、自分の感情の背景にある心の状態(意図や信念)を深掘りします。
感情の原因を内省的に探ることで自分の行動パターンを理解し、主観的で衝動的な言動を防ぐことができます。
2)「心の可能性を探る」3ステップ
(他人へのメンタライゼーション)
人間関係について誤解や困難さを感じた際、相手の心の状態について多様な可能性を想像する練習です。
- STEP①【不確実性の容認(相手の本音を勝手に想像しない)】
相手の強い言動などに直面したとき、すぐに「私を嫌いだからこう言ったんだ」等と断定するのをやめ、「私は相手の本当の気持ちを知らないから決めつけは良くない」と想像で浮かんだ事実を否定し、決めつけによる誤解や一方的な怒りを防ぎます。
- STEP②【複数の視点の探索】
相手の行動の裏側にある心の状態について、「相手がそう発言したのは、どんな理由や意図があったからだろうか?」と、3つ以上の異なる可能性を想像します。
(例:「他のことで忙しかったのかもしれない」「体調が悪かったのかもしれない」「プライベートでイライラすることがあったのかも」など)
感情的な決めつけから離れ、複数の視点を持つことで相手の心の状態を多面的に捉え直します。
- STEP③【対話による検証】
想像した複数の可能性のうち最も可能性の高いものを仮説として持ちながら、穏やかに相手に尋ねることを試みます。
(例:「忙しそうだから別のタイミングで話そうか?何か手伝えることはある?」など)
想像した仮説を実際の対話を通して検証することで、メンタライゼーションの精度が向上し、より現実に基づいた関係性を築くことができます。
この練習を繰り返すことで、感情と行動の間に「考える時間」が生まれ、衝動的な言動を防げるようになります。
完璧を目指す必要はなく、大切なのは怒りや不安を感じたときに、立ち止まって「自分の心は今、どう動いているのだろう?」と、少しだけ関心を向けることです。
心の筋肉を鍛えて、ストレスに負けない穏やかな日常を手に入れましょう!
実践するにあたって気になることやご相談などありましたら、健康相談チャットを気軽にご利用ください。
執筆者プロフィール きくち/看護師
美容・サービス業の会社員として就業をした後に改めて看護資格取得。消化器内科・皮膚科などの臨床経験後に産業看護師として働く皆様の健康をサポートするオンライン相談業務に従事しておりました。一般論ではなく「目の前のあなた」に寄り添ったメッセージをお届けいたしますので、気になること・困ったことがありましたら気軽にご相談ください。
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