皆様こんにちは。ONLINE健康推進室です。
これから年末に向けて、だんだんと忙しくなってくる時期なのではないでしょうか。
今回は少し趣向を変えて、法律などの側面から「睡眠」と「仕事」の関係性について考えていきましょう。
働き方改革やワーク・ライフ・バランスへの関心が高まる中「時間外労働80時間」を超えた場合に産業医面談が義務付けられています。
この80時間という一つの目安は、どのような科学的・社会的根拠に基づいているのでしょうか。
そして、働く人の健康にはどのような影響をもたらすのでしょうか。
知っておきたい「時間外労働・休日労働80時間」とは?
日本の法律では「時間外労働」と「休日労働」をあわせて、原則として
月45時間以内、年360時間以内に抑えることが求められています。
しかし、どうしても繁忙期などでこれらを超えざるを得ないケースがあります。
その際、
ひと月当たりの時間外・休日労働が80時間を超えた労働者に対しては、本人の申出がなくても事業者に産業医による面接指導の実施が義務付けられています(労働安全衛生法66条の8)。
この
「80時間」という基準は、単なる便宜的な数値ではなく、過去の裁判例や医学的研究から明確な健康リスクの分岐点として導き出されています。
80時間というラインの根拠
過去数多くの研究データや労災認定例が積み重ねられてきた中で
「1か月に80時間以上」という長時間労働が、健康被害の増加と明瞭な相関を示す分岐点であることが繰り返し裏付けられています。
私たちの標準的な24時間の使い方
睡眠7~8時間(健康を保つためにこの時間を推奨)
労働8時間(フルタイムの場合の基本時間)
通勤、食事、入浴、家事、自由時間など8時間
→合計8(睡眠)+8(労働)+8(その他)=24時間
上記のように労働時間8時間に加え、労働前後に家事・通勤・入浴・少しのリラクゼーション等で8時間、合計14~16時間使っています。
すると残りは10~8時間となり、この時間が睡眠に充てられています。
また、仕事が忙しくて労働時間が延長されるとき、労働前後の家事・通勤・入浴といった作業の時間短縮はそれほどの効果はなく、結局は睡眠時間を削るようになるのです。

平成16年度版の厚生労働白書では、―日の睡眠時間が4~6時間という睡眠不足状態が長期間にわたると、脳・心臓疾患の有病率や死亡率が高まるという報告がありました。
睡眠時間が6時間未満=【時間外労働が80時間を超える】可能性が高いことが制限の根拠になっています。
▶【必読】からだをむしばむ睡眠不足の脅威
長時間労働と健康障害の深い関係
「働きすぎ」はただ単に「疲れる」というだけではありません。
例えば通常7~8時間寝ている人が、残業によって帰宅が遅くなり毎日1~2時間ずつ睡眠を削ると、月にすると30~60時間も睡眠を犠牲にします。これは1週間分、まったく寝ていない計算にもなります。
実際に、脳や心疾患での労災認定が行われた際も、【長時間労働+睡眠不足】の状態だったのです。
次は主な健康障害について詳しくみていきます。
1. 過労死(脳・心臓疾患)のリスク
最も有名なリスクがいわゆる「過労死」です。
長時間労働による脳卒中や心筋梗塞、狭心症、心不全などのリスクが顕著に高まることが明らかになっています。
厚生労働省の
「脳・心臓疾患の労災認定基準」では、1か月におおむね80時間を超える時間外労働があった場合、発症との関連が強くなると考えられています。
2. メンタルヘルス不調・自殺リスク
長時間労働は心の健康にも深刻な影響を与えます。
強い疲労感による休息不足、ストレスの蓄積によりうつ病や不安障害、自律神経失調症などのメンタルヘルス不調を招きやすくなります。
また、近年は「過労自殺」という社会問題も深刻になっています。
過重労働が続き職場の相談窓口や休息機会もなくなると、本人が追い詰められやすくなり、最悪の場合には自殺という極めて重大な健康障害にもつながり得ます。
3. 睡眠障害・生活習慣病のリスク
毎月80時間以上の残業となると、1日あたり3時間~4時間ほどの時間外労働です。
連日遅い時間まで働くと、慢性的な睡眠不足や生活リズムの乱れが起きやすくなり、免疫力低下、肥満、高血圧、糖尿病などの生活習慣病リスクも増加します。
ドクター面談で必ず聞かれる「睡眠習慣」
働く人と企業を守るためには、80時間という基準を超えた場合に専門家(産業医)による面接指導が必須です。
産業医面談では、まず「最近しっかり眠れていますか?」という質問が必ず出てきます。
そこで「毎日4~5時間程度しか寝ていません」といった回答があれば、健康リスクが極めて高いと判断され、生活改善の指導や就業制限を検討するケースも珍しくありません。
また、睡眠の質も大切です。長時間働いたあとでは、たとえ横になっても寝付けない、途中で何度も目が覚める…といった悩みも増えます。
「眠れているはずなのに疲れが取れない」現象は、身体や神経が常に緊張状態にある証拠であり、慢性的な健康障害を引き起こす恐れがあります。
ドクター面談に呼ばれることに不安を感じる方もいるかもしれませんが、
この面談をきっかけに働き方の調整や医療機関の受診、職場環境の改善が促され、重大な健康障害を未然に防ぐことができるのです。

まとめ
残業がどうしても避けられない時期、「仕方がない」と諦めてしまいがちですが、大切なのは自分の体を守る意識です。
もし産業医が「少し休みましょう」「睡眠時間を増やしてください」とすすめるのは、単なる形式的な指導ではなく、現実に健康障害を防ぐための必要な対応なのです。
毎日でなくても良いですから、出来る範囲で、ご自身でも睡眠の確保、お体の健康を守ることを意識いただけたらと思います。
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